Patients undergoing the medical condition of the description

アスペルガー症候群という発達障害を知っていますか。アスペルガー症候群の人は人とのコミュニケーションが苦手で、落ち着きがないなど周囲からは「変わった人」と受け取られることが多いようです。

今回はアスペルガー症候群の成人の方の原因や、接し方のポイント、生活習慣の方法などをお伝えします。


 


アスペルガー症候群の成人の3つの特徴とは!


1)アスペルガー症候群はどのような病気か

アスペルガー症候群は発達障害の1つで、アスペルガー症候群という名称はハンス・アスペルガー氏によってこの病気が報告されたことに由来します。

アスペルガー症候群は発達障害の中でもPDD(広汎性発達障害)に入ります。

PDDとは、生まれつきの発達障害であり、知能指数は知的障害に満たず、脳の器質的な異常があり、生育環境による障害ではないことです。

知的障害はないため、本人も周囲も障害に気がつかないまま成人になることも少なくありません。

3歳ごろから下記の1~3のいずれかの特性(障害)が現れ、成人になっても治ることはありません。子供のころは見過ごしてしまいますが、成長に伴い周囲から誤解されたり問題視されることがあります。

(1)知らない人になれなれしく話しかける

(2)自分から積極的に接することはないが、誘われればつき合う

(3)他人と関わるより1人でいることを好む

その他の特性は2)以降で記述しますが、どの特性がどの程度現れるのかは、個人差があります。


2)アスペルガー症候群の3つの特性

(1)社会性の障害

・突然大声をあげるなど場にそぐわない行動をとる

・孤立しても好きなことをやり遂げる

・礼儀が身につかない

・感情表現のタイミングがずれる

・間違っていても謝らない

・社会的ルールより自分のルールが優先

・人の気持ちを察しない

・グループ意識や帰属意識が芽生えない

・孤立しがち

(2)言語コミュニケーション障害

・会話のキャッチボールができない

・好きな話題は周囲の空気を読まず一人で話し続ける

・相手の欠点を指摘する

・誰にも通じない独自な冗談を言って笑い出す

・学者のような難しい話し方をする

・人が話している途中で別のことを始める

・何通りもある言い回しが理解できない

・相手の意図することがわからない

・相手の言った「あれ」「それ」などの意味がわからない

・率直な言い方をする

(3)想像力の障害

・変更や中止など予定外のできごとに対応できない

・頑固で融通がきかない

・生活パターンは変えない

・興味がないことに関心を示さない

・例外や他人の間違いを認めない

・自分のルールを押しつけたがる

・季節にそぐわない服を着たり毎日同じ服を着る

・相手が話した言葉の裏を読むことができない

doctor with tablet pc and ill woman at hospital


3)アスペルガー症候群の幼少期と成人期との3つの違い

アスペルガー症候群に幼少期と成人期で障害の程度が異なることはあまりありませんが、幼少期と成人期では現れる特性が変化することがあります。

(1)幼少期に現れる特性

・知らない人にも愛想が良く、自分から話しかけたりなれなれしい態度で接する。

・得意な科目はずば抜けて優秀だが、興味のない科目は成績が悪い。

・漢字の読み書きや暗算など得意なもので満点が取れないと、大声を出したりパニックになる

(2)成人期に現れる特性

・女性に多くみられるのが、自分から他人に関わろうとはしないが、誘われればつき合う。

・他人と関わるのが苦痛で、他人と話もせずに一人でいることを好む。

・指示された仕事しかやらず、周囲の状況を見て手伝うことができない。


4)アスペルガー症候群と他の7つの発達障害の違い

(1)自閉症

【概要】

3歳までに発症する発達障害。コミュニケーションが苦手で視線を合わさず、顔や身体をさわるのを嫌がる。こだわりが強く、奇妙な行動を繰り返す。また、言葉の遅れや知能指数の低下がある。

【アスペルガー症候群との違い】

アスペルガー症候群でもコミュニケーションは苦手だが、言葉の遅れはなく、知能指数も平均以上。

自閉症では視覚・空間認識を得意とする人もいるが、アスペルガー症候群では視覚・空間認識が苦手な傾向がある。

また、自閉症の場合は学習障害を伴うのが一般的だが、アスペルガー症候群に学習障害が伴うことは少ないという違いがある。

(2)レット症候群

【概要】

生後6ヶ月まで正常に発達後、発症し重度の知的障害やけいれんがおこる。発症はほぼ女の子に限られる。手をもむ動作をしたり、協調運動障害が現れる。

【アスペルガー症候群との違い】

アスペルガー症候群は知的障害や協調性運動障害はなく、男女問わず現れる。

(3)小児期崩壊性障害

【概要】

2歳まで正常に発育した後に、社会的能力・言語・排尿や排便コントロール・運動能力のいずれか2つが退行する。また、小児統合症(心に訴える状況に対する反応の欠如)や常同行動が見られる。

【アスペルガー症候群との違い】

アスペルガー症候群では排尿や排便のコントロールはできる。小児統合症や言語に関する退行はなく、運動能力に関しても不器用ではあるが、退行することはない。

(4)学習障害(LD)

【概要】

知的障害はないが、読む、書く、計算する、推論する、聞く、話す、の基本的な学習能力のうち特定の困難さがある。

【アスペルガー症候群との違い】

アスペルガー症候群は人とのコミュニケーションや状況判断が苦手だが、学習能力に支障はない。

(5)注意欠陥/多動性障害(ADHD)

【概要】

不注意(集中力が続かない)、多動性(落ち着きがない)、衝動性(感情や欲望をコントロールできない)という3つの特性がある。多動性や衝動性は中学生頃までには治まるが、不注意は成人になってからも目立つ。

【アスペルガー症候群との違い】

アスペルガー症候群はこだわりが強く自分で作ったルールをずっと守るが、ADHDは飽きっぽいので、長続きしない。

アスペルガー症候群の人は特定の人にしか心を開かないが、ADHDの人は刹那的な関係性を求める傾向にある。

(6)コミュニケーション障害

【概要】

人の言葉を意味のある音声として認識ができないなど、コミュニケーションを取ることが難しいだけでなく、人の気持ちを読むこともできない。

人により障害の程度はさまざまで、口から言葉が上手く出てこない人もいれば、自分の得意分野を延々と話し続けるタイプの人もいる。

【アスペルガー症候群との違い】

アスペルガー症候群の人は少人数の人とは、コミュニケーションを取ることができるが、コミュニケーション障害の人は少人数どころか1対1でもコミュニケーションを取ることが難しい、という違いがある。

また、他の症状はアスペルガー症候群には当てはまらない。

(7)発達性協調運動障害

【概要】

知的障害もなく明らかな脳障害や神経・筋肉の病気もなく、言語機能も優れているが、生活に支障がでるほど不器用である障害。

例えば立って歩くことはできるが、ハイハイをさせようとするとできないなど、手と足を連動させるような動きができないのが、この障害の特徴。

【アスペルガー症候群との違い】

アスペルガー症候群では、誰かの動きを真似て身体を動かすのが苦手だが、たとえば、自分の意思で縄跳びをすることは可能。協調運動障害は自分の意思でも縄跳びをすることができない。

group of doctors meeting at hospital office


5)アスペルガー症候群3大原因

アスペルガー症候群の原因は定かではありませんが、いくつかの説があります。

(1)脳内の異常

脳の前頭葉、間脳、小脳、海馬、偏桃体などの働きが悪いことや、神経伝達物質のGABAやセロトニン受容体の異常が指摘されている。しかし、脳のどの部分で異常がおこっているのかは不明。

(2)胎内環境での異常

胎内で男性ホルモンを大量に浴びた胎児はアスペルガー症候群を含む自閉症になりやすい傾向があるといわれている。

母親が男性ホルモンを分泌するのは農薬やダイオキシンなどの環境ホルモンが影響していると推察されている。

また、母親が妊娠中にヘルペスウイルスや風疹ウイルスに感染すると、胎児がアスペルガー症候群になるリスクが高まるという指摘がある。

ヘルペスウイルスでの確率はごく低いが、風疹ウイルスでは10%近い確率といわれている。

(3)自己免疫疾患

母親や家族に自己免疫疾患(膠原病・アレルギー・喘息・インシュリン依存型糖尿病)を患っていると、子供が胎児の時に自己免疫が脳細胞を攻撃して、脳に異常がおこりアスペルガー症候群になるのではないか、という説がある。


6)アスペルガー症候群が遺伝する可能とは

アスペルガー症候群では、両親の特性を子供が引き継ぐ傾向があります。

例えば子供がアスペルガー症候群の場合、父親の「他人に対して一方的な行動をとる」部分が、母親からは「不安傾向や融通性のない」部分が引き継がれます。

引き継がれた特性の程度は両親とは異なるようです。


7)家族にアスペルガー症候群の方がいる場合の7つの接し方のポイント

ここではご紹介するポイントは家族だけではなく、友人や同僚関係でも役に立ちます。参考にしてください。

(1)家族が正しい知識を身につける

アスペルガー症候群について「成人になれば治る」と誤解をしている家族もいます。まずは正しい知識を身につけ、アスペルガー症候群の人が何に困っているのかを受け止めてあげることです。

(2)話しをする時は具体的に言う

「あれ」「それ」「これ」や「もっと」などを使って話しをすると、アスペルガー症候群の人には何を言っているのかわかりません。

アスペルガー症候群の人に話しをする時には「いつ」「どこで」「誰が」「何をした」を具体的に話しましょう。

(3)予定が変わったら早めに言う

アスペルガー症候群の人は予定にないことを急に言うとパニックになってしまいます。急に予定が変わったら早めに伝えましょう。

普段のスケジュールも目で見てわかるように表にしておき、電車遅延の時の対処法も教えておいてあげるとパニックになるのを防げます。

(4)広い心で受け止める

アスペルガー症候群の人は空気が読めなかったり、相手の気持ちを想像できず、トラブルをおこしたりします。

家族はその度に怒ったりせずに、次に同じことをおこさないための対策を考え、ノートにまとめて学習できるようにしましょう。そして、「今回は良いことを学んだね」と声をかけましょう。

また、外で傷つくことも多いので家庭で優しく迎え、リラックスさせるようにしましょう。

(5)礼儀作法は場面ごとに教える

アスペルガー症候群の人は、礼儀作法や社会のルールを理解するのに時間がかかります。

マンガ形式で理解できる本をもとに教えたり、ロールプレイング形式で家族やってみるなど、個々の適正に合わせた方法で教えましょう。

(6)急にさわったり・後ろから声をかけない

アスペルガー症候群の人はさわられることを嫌がります。無理にさわったりするのはやめましょう。

また、後ろから突然声をかけられると、他の人より驚きますのでやめましょう。

(7)特性に合った趣味や仕事を見つける

アスペルガー症候群の人は得意不得意がはっきりしており、好きなことには集中して高い能力を発揮します。

特性に合った趣味や仕事を見つけられるとストレスの発散ができ、仕事も長続きします。

empty nurses station


8)アスペルガー症候群の診断方法とは

成人のアスペルガー症候群を診てくれるのは「アスペルガー症候群外来」や「発達障害外来」ですが、医療機関によっては成人を診てくれない場合があります。

他には「精神科」で診てもらえますが、医療機関により専門分野が異なりますので受診前に、発達障害の診断をしているか前もって確認するか、各都道府県の「発達障害支援センター」で紹介してもらいましょう。

ここでは、精神科での診察と検査についてご紹介いたします。初診時には以下のことについて質問されます。

・現在の症状(精神症状と身体症状)

・いつから症状があるか

・きっかけや最近おこった変化

・家庭環境など

・対人関係や自分の性格など

・仕事歴や勤務状態など

・幼少期のこと

・病歴や服用している薬

・家族歴(親類などにダウン症など遺伝する病気の人がいないか)

・未熟児だった人は出産時の状況

・生育状況

場合によっては親や兄弟から話を聞く場合があります。

検査は病院によって異なりますが、アスペルガー症候群であるか調べる手がかりとして知能検査を行います。診断で使用する検査は「ウェクスラー式知能検査(16歳以上ではWAIS-3)」です。

このウェクスラー式知能検査では、「言語性知能尺度」「動作性知能尺度」があり、言語知能指数のVIQと動作性知能指数のPIQを総合したIQで算出されます。

言語性知能尺度の6下位尺度、動作性知能尺度の5下位尺度の11下位尺度で検査をします。各下位尺度の概要は以下の通りです。

(1)言語性尺度

知識蓄積型(結晶性知能)の評価尺度。後天的要因による部分が多い。

・知識尺度・・・人名、地名、古典、書籍名、歴史など広範囲な分野の基礎知識の範囲や分量を計測する。

・数唱尺度・・・検査者が唱える数字をそのまま繰り返す順唱と、読み上げた順番の逆から繰り返す逆唱により、状況適応的に記憶を想起する流動性知能を測定する尺度。

・単語尺度・・・単語と言葉に関する語彙の豊富さと理解度を検査する尺度。

 ・算数尺度・・・算数の基礎によって関係する計算問題によって構成された尺度。パターン化された計算問題で流動性知能と結晶性知能を測定。

 ・理解尺度・・・社会や経済の基礎、日常生活の知識を問う尺度。

 ・類似尺度・・・物事の概念と理解を前提として2つ以上の物事と概念の間に存在する類似性について問う尺度。今までの経験で物事や概念の意味を理解できているか測定。

 (2)動作性尺度

状況対応的な流動性知能を測定する尺度。後天的な学習や教育環境の影響を受けがたい特性を持つ。

・絵画完成尺度・・・欠如部分がある絵画を提示して、欠如している部分を指摘させる検査。時間が決められているため、知覚機能の反応速度も査定できる。

 ・絵画配列尺度・・・時間的連続性と物語的相関を持つ絵画を並べ替える検査。物語を発見する能力と時間経過を認識する能力が要求され、流動性知能を測定する尺度。

 ・積木模様尺度・・・積木で作る模様を手本と同じように積木で模様をできるだけ早く作らせる検査。空間認識能力が大きく関係する尺度。

 ・組み合わせ尺度・・・複数の紙片を利用して1つの意味のある形や模様を作る検査。流動性知能と空間認識能力を測定する尺度。

 ・符号尺度・・・記号とセットになっている数字を素早く記憶して、見本と同じように記号とセットになっている数字を書き込んでいく検査。変化する状況に適応する流動性知能を測定する尺度。

この他、医師の判断により脳波と血液検査を行う場合があります。

問診と検査結果によりアスペルガー症候群であるか診断しますが、診断基準にはアメリカ精神医学会の「DSM-IV-TR」またはWHO(世界保健機関)の「ICD-10」という基準を用いて診断をします。


9)アスペルガー症候群の治療法とは

アスペルガー症候群には有効な治療法が確立されていません。現在行われているのは、心理療法です。

この心理療法はカウンセリングに近く、アスペルガー症候群の人が抱える問題を整理しながら、日常生活で問題がおきないように生きられるかを考えていく方法です。

心理療法を行うことで10)で紹介するような2次障害を発症しないよう助言をし、必要であれば、精神安定剤などを処方します。


10)アスペルガー症候群の2次障害

周囲の理解が得られなかったり、仕事や勉強が上手くできないことからストレスを抱え、アスペルガー症候群とは別の病気を発症してしまうことがあります。

これらの病気は周囲の理解や支えで、発症を防ぐことができます。

(1)うつ病

仕事や趣味に興味がわかず、睡眠障害や頭痛などの体調不良が続く状態になる。専門医の治療が必要で自分で治すことはできない

(2)統合失調症

幻覚や幻聴が現れ問題行動をおこしやすくなる。早期に専門医の治療が必要

(3)強迫性障害

こだわりが強迫観念になり、極端な行動をおこす。専門医による投薬治療や認知行動療法などの治療が必要

(4)ひきこもり

ひきこもりという病気はないが、6ヶ月以上家族以外の人と親密な関係を保てない状態。職場や学校での理解が得られないことに起因することが多い

上記の他、睡眠障害や頭痛、腹痛、摂食障害など。


   


今回のまとめ

1)アスペルガー症候群とは発達障害の1つ

2)アスペルガー症候群の3つの特性は社会性・言語コミュニケーション・想像力の障害

3)アスペルガー症候群の幼少期と成人期で特性が変化することはほとんどない

4)他の発達障害との違いとはアスペルガー症候群は知能や運動、学習能力の低下はなく、社会性や言語性、想像力に乏しい

5)アスペルガー症候群の原因は脳内の異常、胎内環境異常、自己免疫疾患

6)アスペルガー症候群は遺伝する可能性があるが、特性の一部が引き継がれる

7)アスペルガー症候群の人への家族の接し方は障害を正しく理解し、特性や傷ついた心を受け止めてあげること

8)アスペルガー症候群は問診と知能検査結果をもとに定められた診断基準から診断する

9)アスペルガー症候群の治療法は心理療法

10)アスペルガー症候群の2次障害は生きにくさを感じやすいことから発症する