医師のパソコンを見つめる女性の患者

記憶力が悪い、人の名前が覚えられない、こんな人がいます。それとは逆に、覚えたばかりの英単語をすぐに忘れてしまう、財布やスマホをいつもどこかに忘れてきてしまう、という人もいます。

前者は個性、後者は病気のせい、と言われるます。今回は物忘れで発症される病気とチェック方法、予防方法をお伝えします。


   


物忘れから考えられる3つの病気!検査方法とは


1)物忘れの軽度、中度、重度のチェック項目とは

物忘れ、とは2つの理由があると言われています。一つは加齢によるもの、もう一つは脳内の認知機能低下です。

認知機能とは、記憶の仕方と記憶の引き出しがきちんと作用しているのか、ということです。そのためのテストがあります。

(1)Mini Mental State Examination = MMSE (ミニメンタルステート検査)

質問内容はこのようになっています。

1. 日時を聞くもの 例)今日は何月何日か 何曜日か

2. 場所を聞くもの 例)ここは何県か 何市か

3. 時勢を聞くもの 例)今の首相は誰か

4. 記憶を確かめる 例)みかん、鉄道、田植え などの関連のないものを3つ挙げ、復唱させる

5. 計算をして見る 例)100 引く 7 、また7を引き、また7を引き、間違えた時点で終了する

6. 記憶を確かめる 例)先ほどの みかん、鉄道、田植え を 思い出して復唱させてみる

7. 名詞を質問する 例)壁、帽子 などを見せて、正確に名前を答えさせる

8. 文章を復唱する 例)春になると、桜の木々が一斉に蕾から花びらを開いて、春の喜びを感じさせます など

9. 文を聞かせ、行動させる 例)目を閉じてます 目を開けて右手で左目を隠します そのまま左手を握ります

このようなものを行い、各々できた度合いで点数をつけ、軽度、中度、重度を判断します。

(2)長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

長谷川和夫医師(1921-) 聖マリアンナ医科大学教授。学長を経て、理事長に就任し、認知症研究の第一人者として日本の認知機能テストの基本を作り上げました。

質問内容は、次の通りです。

1. 年齢を聞くもの 例)お歳はいくつですか

2. 日時を聞くもの 例)今日は何年何月何日ですか 何曜日ですか

3. 場所を聞くもの 例)私たちがいまいるところはどこですか

4. 記憶を確かめる 例)これから言う3つの言葉を言って下さい。あとでまた聞きますので、覚えておいて下さい

5. 計算をして見る 例)100から7を順番に引いてください

6. 順番を確かめる 例)私がこれから言う数字を逆から言ってください 3-4-7、9-3-7-1など

7. 記憶を確かめる 例)先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみて下さい

8. 記憶を確かめる 例)これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言って下さい

9. 言葉を聞くもの 例)知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください

これらは、点数化されて、その度合いで病気の可能性を突き止める指標になっています。

長谷川式はアメリカ発祥のMMSEよりも1年早く発表され、臨床心理士の検査ではパソコンプログラムを使うなど、健常者との対比で脳のどの部分に異常があるのかを判断するのに大きな役割を負っています。

Forgetful Senior Man Looking In Cupboard


2)物忘れの考えられる2つの原因とは

(1)脳の神経細胞の破壊

物忘れには、脳が主原因と考えられてきました。脳には1,500億もの神経細胞があり、行動を指令する小脳から神経細胞を通って、電気信号が流れます。

この神経細胞が破壊されてしまうと、途中経路で信号が止まり、指令がストップしてしまいます。バケツリレーでは、次から次へと手渡しで、バケツを運んでいきますが、どこかで止まってしまうと全員が行動を停止してしまいます。

物忘れと行動停止を考えれば、脳内の神経細胞、そしてそこに栄養を提供する毛細血管と、老廃物を回収していく静脈などがスムーズでないと、結果的に物忘れにつながることになります。

(2)不整脈

もう一つは、最近話題の心臓の不整脈です。2013年11月20日に放送された、NHKの情報番組「ためしてガッテン」。ここでは、心臓が引き起こす脈とびが、物忘れの原因のひとつ、と指摘しています。

心臓は、血液を全身に送り出すポンプの役目をしています。血管がもろくなったり、詰まりが出てくると、より圧力をかけて、血液を放出しなければならず、心臓の動きは全身すべての血管の健康状態に密接に関係しています。

ところが、ところどころ、血管に障害物があると、脈がいきなり飛んでしまうことがあります。急になくなってしまう、つまり心臓停止です。

これが3秒ほど続くと、意識がなくなり、倒れることもしばしば。ある瞬間の物忘れにも関係するわけです。


3)物忘れから引き起こされる可能性のある3つの病気とは

ここでは、物忘れが単なる加齢症状なのか、それとも重篤な病気の前触れなのかを、判断するチェック項目を挙げます。

(1)認知症

物忘れ、といえば誰もが認知症かどうか、と疑います。それには、物忘れの特徴を知っておくことが必要です。

まず、食事をしたことを忘れたかどうか。次に、あれほど興味のあったことに無関心になるかどうか。例えば、社交的だった人が、家にばかりいる。

スマホやタブレットなど、最新のものに飛びついていた人が、興味を失っている、などということでわかります。

なんだか、ぼうっとしている時間が続くようなら、認知症のどこかのステージにいるかもしれません。認知症になった場合、怪我をしやすい状況になります。

気がつかないうちに転んだり、ぶつけたりといったことに発展します。予測できない、時間の観念がない、といったことから、昼夜が逆転するなどして、勝手に過食するケースもあります。

認知症になった場合、次にどんなことが起こるのかを推測するために、看護師さんや区役所などの地域の専門家に相談することが必要です。

(2)脳梗塞

脳梗塞の前触れのひとつに、物忘れがあります。ご存知と思いますが、脳内を無数に走る動脈からの毛細血管、その一つ一つが血液と酸素、栄養分を運んでいます。

行き先は神経細胞ですが、血管内部が老化したり、詰まることで、毛細血管を流れる量は極端に減ってしまいます。酸欠になると、魚も水面で口を開け、苦しそうにしますが、脳内でも同じ。

神経細胞はあっという間に死んでしまいます。その結果、ヒトの行動に一貫性が失われます。食事の際に右手で箸を持つのか、左手で持つのかを忘れる。言葉がなかなか出てこない。

体の動きがときどき硬直したように止まる、といった状況は、すべて脳内で命令、伝達、行動というパターンがどこかで切れてしまっているからです。

ここで、手が震える、痙攣があったら、まず脳梗塞の疑いあり、です。即座に救急車を呼びましょう。

早期治療であれば、血管を広げる処置で普段通りの生活が可能です。遅ければ、片麻痺というケースになってしまいます。

(3)うつ

物忘れは、うつ病の症状のひとつです。うつは、気分障害と言われますが、簡単に言えば、心穏やかな日々が暮らせない状況が2週間以上続くことです。

自宅近くで強盗事件があった、会社で上司にひどく叱責された、などということは2日、3日の間は気分的に落ち込んだり、恐怖感を抱くでしょう。

この結果激しいストレスの副産物が物忘れに発展することはありうるのです。ですが、2週間というのはかなり重い症状です。

東京の慶應義塾大学病院によると、2013年の入院件数は300件。この病院は都市部にあり、開放病棟なため、より程度の安定した患者しか受け入れができず、隔離病棟入院のケースは他の精神科病院を紹介されます。

物忘れといった場合、様々なうつ特有現象のひとつであることから、電気けいれん療法、投薬療法など様々な療法を行います。

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4)物忘れがひどく気になる場合の検査方法とは

(1)神経内科・ものわすれ内科を受診

物忘れが気になった場合、高齢者の場合は神経内科が適当です。ものわすれ外来、という名称のついた診療科ならば上記に述べた検査で、認知症なのか健忘症なのかを判断してくれます。

ただ、物忘れに関して、急に痩せてきた、体の調子が悪い、という場合は先に内科に見てもらうのがよいでしょう。

(2)内科を受診

慶應義塾大学の三村將医師の話では、精神科や神経内科は専門領域を得意としており、体全般を診るのは内科であるとのこと。

ですから、体の不調がある場合は、先に内科で診てもらい、そのあとに神経内科で臨床してもらうと、スムーズ、とのことです。


5)物忘れを改善するための療法とは

(1)「物忘れ」は病気領域ではない

物忘れ、とは医学用語ではありません。医学の世界では 記憶減退 と言います。わたしの父は、ちょっとぼけているようなんですが、とか、なんだか最近物忘れがひどくて、などという患者の訴えに対し、医師は治療より前に、検査をして、明らかに病気の領域に入っていなければ、初診料医療で終わりです。

(2)日々の生活を改善

ですから、物忘れになっている場合、日々の生活を振り返ることが大事になります。

例えば、平屋の家に住んでいて、階段の上り下りをしていない人。物の在りかを忘れては、よく家族や同僚にすぐ聞く人。こういう人は、物忘れになりやすいと考えましょう。

食事の場合は一手間かけると格段に美味しくなるのと一緒で、考えるという時間やちょっと登って降りて、という ハードルを毎日こしらえておくこと。

(3)考える時間・脳を使う時間を積極的に意識

脳は命令したから、行動するまでの間に、目を使うのか、耳を使うのか、鼻を使うのか、などと指示系統を瞬間的に探しています。

体全体五感全体を敏感にしている人は、物忘れにはなりません。電子辞書ではなく、紙の辞書を使うべきなのは、指を使い、この辺りだ、とページをめくる手間暇がかかっているから、脳を使っているわけです。

便利な世の中でも、面倒な部分は残しておかないといけません。


6)脳の活性化へ食事との関係

脳の活性化とは、要は、脳が疲れている状態の時に欲しがっている栄養分があれば、良いことになります。疲れたなあ、と思えば糖分を欲しがります。

つまり、脳において特定のよい活性化成分はない、という方が正しいのです。目にはブルーベリーがいい、記憶には魚がいい、などと言われますが、結局のところは、バランスです。

肉、肉、肉、肉と肉食ばかり続けるのではなく、魚、肉、野菜、豆類、と繰り返すのがよいのです。


   


今回のまとめ

1)物忘れの軽度、中度、重度のチェック項目とは

2)物忘れの考えられる2つの原因とは

3)物忘れから引き起こされる可能性のある3つの病気とは

4)物忘れがひどく気になる場合の検査方法とは

5)物忘れを改善するための療法とは

6)脳の活性化へ食事との関係