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同じことを何度も尋ねる、人の名前が出てこない、物の名前が言えずに、あれ、それ、で済ましてしまうようになった、そんな人を物忘れ、と呼びます。

しかし物忘れと加齢による忘れっぽさは全く違うものです。今回は物忘れへの対策、潜む病気チェックリストについてお伝えします。


   


物忘れへの3つの対策!3つのチェック項目とは


1)物忘れの3つのチェックリスト

物忘れは誰にでも起こる症状です。そのため、チェックリストは普段何気なく行っていることに、注意をすることが必要になります。特別なことではなく、日々行う行動を観察しましょう。

(1)料理が作れない、料理がわからない

調理者の場合

料理に絞ってチェックすることは、物忘れかどうかの大事なポイントです。調理を行う人が、塩を入れ忘れたり、醤油とみりんを間違えたり、といったミス。

お米を研がないままお釜のスイッチを押してしまう。魚を焼きながら、サラダを作る、といった複数のメニューを同時に作ることができなくなる。

食べる人の場合

箸を使うところを手づかみで食べてしまう。熱い味噌汁を一気に飲んで火傷をしてしまう。これは遂行機能と呼ばれるもので、いっぺんに用意する、洗う、焼く、切る、味付けするといった行動を順番に行う高度な行為です。

これができないということは、作業の順番がわからない、ということを示します。単なる物忘れではありません。

(2)場所がわからない、道に迷う、地図が読めない

運転中、街のどこを走っているのかがわからなくなってしまう。鉄道駅から歩いて5分なのに、30分もかかっている。

これは迷子になっている、という単純なものではありません。自宅と職場の間の道、駅、鉄路といった経路である点と線がどこかで不通になっている状態です。

場所がわからない場合、普通なら今いる場所までどうやってきたのかを反芻するものですが、それができない状態です。どこを通ってここにやってきたのかが全く記憶にない、それが自宅近くでも生じます。

(3)怒りっぽくなる、歩き方が遅い、物欲がなくなり、不安を口にする

おおらかで穏やかだった人が、小さなことにこだわって急に怒り出してしまう。歩くスピードが遅くなり、歩幅が狭くなる。食べたい物や行きたいところを尋ねても、無関心になって、特にないと言い出す。

出かけるときカバンの中身をなんどもチェックしなおす癖がある。性格が変わってしまう、意欲がなくなる、といった症状は、物忘れ特有のものです。

頭が頑固になってしまう、と周囲に思われてしまい、誰もが遠ざかってしまうようになり、ますます嫌われているのではないか、という不安を抱き始めます。

ひとつひとつの反応が他人を不快にさせることが多くなると、完全に物忘れ障害が原因とわかります。


2)「物忘れがひどい場合」と「初期の物忘れ」の2つの違い

物忘れは一見、加齢によるものと考えられがちです。ですが、普段何気なくこなす料理ができなくなる、自宅付近の散歩で道に迷う、ということは加齢ではありえません。詳しく比べてみましょう。

(1)初期の物忘れとは

今朝食べたものは、昨日出かけた場所は、おととい見たテレビ番組は、といった記憶力を確かめるテストを行った場合、とっさには答えが浮かばないものの、ヒントを教えると正解が出てくるケース。これが初期の物忘れです。ここで知っておきたいのが、2つの脳です。

脳の中にはメモリー機能が3つあり、よく知られているのが海馬です。ここは人の名前や住所、歴史上の人物などの暗記記憶をしまいこむ場所。

これに対して、泳ぐことや自転車に乗ることといった、体で覚えている記憶は頭の中心にある大脳、正確には大脳基底核と、頭部下にある小脳の2箇所がセットになっています。

初期の物忘れは、海馬に預けられた記憶。ですから、ヒントを出せば思い出す程度の軽い忘れなのです。

(2)物忘れがひどい場合とは

頻繁に忘れるというのは確かに記憶力が衰えている、と周囲が理解できますが、問題はヒントを出してもわからないケースです。

生まれた年はいつだったか、というようなプライベートな出来事は暗記ではなく、戸籍や学校での手続き、自己紹介などの経験値で覚えていますから、大脳基底核か小脳にメモリーされているはずです。

ところが、こうしたことが忘れてしまっている、となると、かなりひどい物忘れと言えます。物忘れの際たるものは、忘れたという認識すらないことです。

脳内にあるはずの記憶を取り出す経路が、ぷっつり断ち切られているのが分かります。

ドクターの胸ポケット


3)物忘れを放っておくことのリスクとは

2015年現在の日本では、ひどい物忘れである認知症患者が460万人超、65歳以上の15%が認知症と言われています。

誰もがなりうる認知症の問題は、本人と家族だけではありません。大きな社会問題ともなっています。具体例を挙げてみましょう。

(1)認知症は本人でなく、家族をも加害者にする

2014年4月24日に名古屋高裁が出した判決によると、賠償額360万円を被告が支払うことを命じました。原告はJR東海、被告は91歳の妻と息子63歳。

正式には、この二人は被告の遺族であり、事故の当事者は要介護4で認知症の夫、で徘徊中に線路に入り、はねられ死亡。賠償はもちろんこの事故での遅延や対応費用の一部です。

実はこうした事故や、認知症患者が自ら自動車運転で高速道路を逆走し、大事故を起こすことは珍しくなく、裁判の正しさ云々は別として、新たな被害者を生むことになる危険性だけは、どうしても避けられません。

(2)行方不明者1万人

年々増加する認知症、その多くの問題は徘徊です。特に老老介護が多いこともあり、経済的な事情から家に閉じ込めておくしか方法のない人たちが毎年増えているのです。

閉じ込められる人たちは、その原因がわかりませんので、なんとかして自分の世界を取り戻そうとし、外へ出てしまいます。

それが徘徊となって、しまいには行方不明という形で結末を迎えます。警察庁発表の全国認知症行方不明者は、2014年で10,783人、その数は増加しています。


4)物忘れへの3つの対策とは

物忘れが軽度で済まされるならば、人生なんの問題もありません。問題があるとすれば、やはりひどい物忘れになった場合です。

残念ながら、物忘れを治す治療はこの世には存在しません。その代わり、改善はしないものの、忘れることのスピードを遅らせる対策は可能です。それをまとめてみます。

(1)洋食から和食へ転換

明治時代に洋食が日本に入ってきてから、日本人は肉食、パン食へと目覚ましい変化を遂げました。ハンバーグやカレーライスは子どもの好きなメニューの上位入り、牛肉もアメリカ、豪州などから毎年輸入量が増えています。

また、牛丼や焼肉文化が浸透し、外食での牛肉取り扱いは世界的にも日本ほどバラエティに富んでいる国はありません。

肉は加熱処理をすることで美味しくなりますが、同時に活性酸素を発生させてしまいます。活性酸素は体内に入ると血管を通る血液に運ばれ、全身に回ります。

脳内では次々と脳細胞を酸化させてしまうため、どんどん細胞は壊れてしまいます。そのため、肉食の場合は同時に抗酸化物質を含む野菜や果物を肉以上に摂取しなければなりません。

抗酸化物質が豊富なのは、ゴマ、ほうれん草、魚、オリーブオイルなど。そして緑茶、りんごなども非常に効果的な食べ物、飲み物として有名です。

野菜と果物、魚などは総じて多く摂取することが大事なのです。こうした対策が、認知症を遅らせたり防ぐことに繋がります。

(2)手先を動かす

人間の体の中で、一番動く部分といえば手です。手を動かすことは、指の隅々まで血液が回ることを意味します。血管はどこかで血液が滞留してしまうと、体全体の血管の流れが鈍行になります。

血管が流れないことは、栄養分が運ばれず、老廃物も運び出されないことになります。

ですから、ハサミを使ったり、料理を作ったり、ちょっとした手作業を毎日行うことが、血流を滑らかにし、脳内にも新鮮な血液が回ることを意味します。

よく、ピアノ奏者は認知症対策にいい職業、と言いますがこれは本当なのです。

(3)毎日の変化を楽しむ(洋服や見た目に気を使う)

作家で投資家として知られた邱永漢氏。2012年に88歳でこの世を去りましたが、常に笑顔で経済について成功と失敗の両方をわかりやすく実体験をもとに記し、その多くがベストセラーになりました。

彼は若い人と同じような感覚でいることが、元気な印、と公言し、服装も若々しく常に若い人と付き合っていました。

とにかく行動力があり、別荘を建てたときも若い設計士に依頼して、完成はしたものの、暖炉の煙が家中にもくもくと立ち込め、やはりベテランのプロに依頼すべきだった、などと述懐するなど、大変親しみやすい人であったことも事実です。

これは、人付き合いのよさ云々よりも、自分に正直であることから、くよくよしない、ストレスを溜めない生き方ができていたことを立証するものなのです。

様々な物忘れの症状がある中、対策はわかりやすく、誰でも簡単にできることから始めましょう。今からでも遅くありません。3つの対策で予防は可能なのです。


   


今回のまとめ

1)記憶には、海馬による記憶と大脳基底核、小脳による記憶の2つがある

2)記憶が薄れる物忘れは、通常海馬が関係している

3)ひどい物忘れの場合は、大脳基底核、小脳が関係する

4)物忘れがひどい場合、認知症などになるが、その影響は計り知れない

5)物忘れは、家族を悲劇へと導く可能性がある。その人数は460万人を超えている

6)物忘れは食い止めることができる。それには食事、手先の運動、おしゃれなどがいい