ベンチに座り遠くを見つめる老人

認知症になる可能性は誰でもあります。もし、家族が認知症になった場合、どんな風に接していけば良いのでしょうか。

今回は認知症の症状や対策に加えて、家族が気をつけてあげることなどについてご紹介します。 


   


認知症の介護に必要な6つのポイント


1)認知症の2種類の症状とは 

「認知症」は大きく分けて、「アルツハイマー型認知症」(認知症全体の約 60%)と「血管性認知症」(同約 20%)の2つがあります。以下にそれぞれの症状を簡単に整理します。 

(1)アルツハイマー型認知症 

何らかの原因によって脳細胞そのものが変性し萎縮してしまう病気によるものです。徐々に物忘れが始まり、ゆっくりと進行していくのが特徴です。

古い記憶は比較的ありますが、 最近の出来事を忘れることが多くなります。 また、場所や時間がわからなくなるなどの「見当識障害」や「徘徊」「妄想」などの症状が認められます。 

(2)血管性認知症 

脳の血管が詰まったり破れたりして血流が悪くなり、その結果、脳の働きが低下して起こ るものです。症状にはいくつかの特徴があり、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進行します。

知的能力や身体能力の低下の程度にもムラがあり、記憶低下が顕著であるにもかかわらず判断力や理解力は変わらない、いわゆる「まだら認知症」になったりします。

また、些細なことで大喜びしたり激怒するなど、感情が強く出る「感情失禁」も症状の一つと考えられています。 


2)認知症の2つの対策 

記憶障害やその他の認知機能障害などを改善させる確実な治療法は現在ありません。したがって、認知症の対策には原因となる病気の再発予防と症状に対する対症療法が対策の中心となり、以下の2つの事項が重要です。 

(1)生活習慣の見直し 

脳梗塞や脳出血の原因は生活習慣病によるものが多いといわれています。生活習慣病は、 運動不足や過食、ストレスなどから起こりうるものなので、基本的な生活習慣の見直しから始めることが必要となります。

栄養バランスの良い食事と適度な運動に心がけ、血糖値などにも留意して「糖尿病」などを防ぐことに努めることが大切です。 

(2)リハビリの実施 

リハビリによって脳を活性化し、症状の進行を遅らせることも必要な対策です。音楽を聴いたり、歌を歌ったり、絵本や本を読んだりするなど、当事者の状態に合ったリハビリを行います。

手を使った簡単な作業を行うことも脳を活性化させ、進行を緩めることにつな がるといわれています。 


3)家族が認知症になった場合の6つの留意事項 

認知症になる可能性は誰にでもあります。そのことを認識したうえで、もし家族が認知症になった場合の留意事項などについて整理します。 

当事者は、理解力は落ちているかも知れませんが、感情面はとても繊細です。

家族が以下のポイントを理解・実施しながら温かく見守り、適切な介護を施せば、病気の進行を遅ら せ自分でやれることも増えていくと考えられます。

(1)認知症に対する理解を深め、望ましい接し方に心がける。 

(2)信頼できる医療機関、専門医を探し、病状や治療方針などを正確に把握する。 

(3)「地域包括支援センター」や「ケアマネージャー」など、信頼できる相談機関を確保し、 近隣の「通所介護」や「グループホーム」などの地域密着型サービスについて把握する。 

(4)薬の誤飲や転倒事故、火傷などに注意を払い、見守りを強化する。 

(5)一人で抱え込まずに身近な経験者に相談するなど、共感と情報交換を行っていく。 

(6)当事者を否定せず、その尊厳を守りながら接する。 

女性にカルテを見せる男性の医者


4)した方がよいこと、望ましくないこと 

認知症の当事者は、病気になる前は社会や家庭を支えてきた人たちです。できないことばかりに目を向けるのではなく、尊厳を守りながら接していくことが必要です。

認知症の人に対して積極的にしてあげるべきことは、以下の事項です。 

(1)した方が良いこと

・何度同じことを聞かれても初めて聞かれたときと同じように答えてあげること。 

・さまざまな訴えを肯定的に受け入れ、傾聴し、ともに行動してあげること。 

・自分でやれることは自分でやるようにさせ、温かく見守ってあげること。 

(2)望ましくないこと

・「おかしなことを言っている」と判断し、無視したり、怒ったり、逆に説得したりするこ と。 

・「みっともない」、「危ない」などといった理由を掲げて家に閉じ込め、外出や交流の機会を奪ってしまうこと。 

・「もう何もできないから」と何も自分でやらせないようにしてしまうこと。 


5)認知症の症状を緩和させる5つの取組み 

上述したとおり、記憶障害やその他の認知機能障害などを改善させる確実な治療法は現在ありません。したがって、認知症になった場合はその進行を緩和させることが重要になってきます。 

特に認知症の前段階と考えられる「軽度認知障害(MCI)」の場合には、以下のような生活習慣を心がけることが重要であり、生活習慣病の予防にもつながります。 

(1)食習慣

野菜や果物(ビタミンC、E、β カロチン)、魚(DHA)を摂取することが大切です。また赤ワインに含まれる「ポリフェノール」も予防に効くといわれています。 

(2)運動習慣 

適度に身体を動かすことが必要です。週3日以上の有酸素運動が最適といわれていますが、当事者に合った運動を心がけます。 

(3)対人接触 

人づきあいをして話したり、よく笑ったりすることが必要です。 

(4)知的行動習慣 

本を読む、文章を書くといったほか、ゲームをすることなども有効です。 

(5)睡眠習慣 

一日 30 分未満の昼寝や起床後2時間以内に日光を浴びることが有効と考えられています。 


   


今回のまとめ 

1)認知症は、「アルツハイマー型認知症」と「血管性認知症」に大きく分けられ、前者は徐々に物忘れが始まりゆっくり進行し、後者は良くなったり悪くなったりを繰り返しなが ら進行する。 

2)記憶障害やその他の認知機能障害などを改善させる治療法は現在ない。

したがって、 再発予防と症状に対する対症療法が対策の中心となり、「生活習慣の見直し」と「リハビリの実施」が重要な対策となる。 

3)家族が認知症となった場合には、認知症に対する理解を深め、温かく見守りながら適切な介護を施していかねばならない。 

4)認知症の症状を緩和するためには、生活習慣病に注意しながら、特に「軽度認知障害 (MCI)」の際に、食事や適度な運動などを習慣づける必要がある。