カルテを持つ女性医師の手

みなさんは脳梗塞という病名を耳にしたことがあると思います。脳の危険な病気には、脳出血や脳卒中、くも膜下出血などがありますが、これらの違いについて、ご存知でしょうか。

もし身近な人が脳の病気で倒れたら、適切な処置ができるでしょうか。今回は、脳梗塞の症状と、身近な人が倒れた時の処置についてご紹介いたします。


 

   


3タイプ別!脳梗塞の10の症状と対処法


1)3タイプの脳梗塞とは何か

そもそも、脳梗塞、脳卒中、くも膜下出血などの病気の違いはなんでしょうか。脳卒中には、出血性脳卒中(頭蓋内出血)と虚血性脳卒中(脳梗塞)の2つがあります。

出血性脳卒中(頭蓋内出血)には脳出血とくも膜下出血の2つがあります。そして、虚血性脳卒中(脳梗塞)には下記の3つがあります。

(1)アテローム血栓性脳梗塞

脳や頸部の太い動脈が詰まります。このタイプの脳梗塞には前触れとしてTIA症状がでやすい特徴があります。

(2)心原性脳塞栓症

心臓の中でできた血栓が頸動脈を経由して脳動脈でつまるので、急激におこる特長があります。

詰まっていた血栓が壊れて、脳動脈が血流を再開すると、梗塞内に出血して「出血性脳梗塞」をおこすこともあり、命にかかわります。

(3)ラクナ梗塞

穿通(細い)動脈がつまって、脳深部に1.5㎝未満の梗塞がおこります。日本人に多く、脳梗塞の患者全体の35%を占めます。

これは日本人には細い血管が動脈硬化になりやすい遺伝的な特徴があるため、といわれていますが近年は食事の欧米化でラクナ梗塞になる患者は減少しつつあります。


2)3タイプ別 脳梗塞の症状と原因

 (1)アテローム血栓性脳梗塞

原因

コレステロールなどがたまってできたアテロームが破れ、そこに血液成分の血小板が集まって血栓ができます。この血栓が大きくなって脳の太い動脈や頸部動脈につまって、アテローム血栓性脳梗塞がおこります。

動脈硬化がきっかけでおこる病気のため、高血圧、糖尿病、脂質異常や喫煙が原因です。

症状

運動麻痺や感覚障害。失語、失行(服が着られないなど)、失認(簡単な計算ができない、左右がわからないなど)、がおこります。

徐々に血管がつまっていく時は、症状もゆるやかに現れます。また、TIA症状が前触れとして現れるのもこのタイプです。

(2)心原性脳塞栓症

原因

心臓病が原因でおこります。心房細動、洞不全症候群、急性心筋梗塞、卵円孔開存が関係しておこります。

心臓の中でできた大きな血栓が頸動脈から脳へ流れてつまって、心原性脳塞栓症がおこります。太い血管でつまるため、大きな脳梗塞をおこしやすい特徴があります。

症状

急激に症状が現れます。

半身麻痺、感覚障害、失語、失行、失認、半盲(視野の半分が失われる)、共同偏視(両目が左右どちらかを向いたままになる)、意識低下も多くあります。

(3)ラクナ梗塞

原因

脳の深部にある細い動脈に動脈硬化が生じて厚くなり、血管内腔が狭くなってつまるためにラクナ梗塞がおこります。

動脈硬化がきっかけでおこる病気のため、高血圧、糖尿病、脂質異常や喫煙が原因です。

症状

大きな症状が現れることはありません。症状は運動麻痺や感覚障害が中心です。失語、失行、失認、半盲などの症状は現れません。軽症で予後も良好です。

気がつかないうちに多数の梗塞ができて、認知症の症状が現れることがあります。

Doctors and nurses discussing together


3)TIA症状の主な4つとは

アテローム血栓性脳梗塞の文中に出てきたTIAとは、一過性脳虚血発作のことです。頸動脈の内壁でできた血栓が脳へ流れてきて、一時的につまることで、手足の麻痺などがおこります。

しかし、血栓が自然に溶けて流れていくと、数分から24時間以内に症状は消えます。この状態で異変に気がつき治療を始めれば、大きな脳梗塞を防ぐことができます。

(1)身体の片側のしびれや麻痺(物を落とす、感覚がにぶる)

(2)ろれつが回らない

(3)めまいやふらつき(フラフラめまい、グルグルめまい、どちらも起こります)

(4)物がみえにくい、視野がかける(片目が見えない、視野の半分が欠ける)

これらの症状は、短ければ数分で治まるので、年だからと片付けてしまいがちです。

しかし、健康診断で高血圧や糖尿病、脂質異常を指摘されている人や、喫煙者は上記のような症状が出たら、内科や脳外科へ受診してください。


4)身近な人が倒れた時に、救急車が来るまでにすること

ここからは、身近な人が脳梗塞で倒れたら、何をすべきかご紹介いたします。

<脳梗塞発症時の10の症状>

(1)運動障害(半身麻痺)

(2)感覚障害

(3)言語障害

(4)視野障害

(5)めまい

(6)運動失調(ふらふらして立てないなど)

(7)物が二重に見える(複視)

(8)頭痛(急に激しい頭痛がおこる)

(9)健忘(突然おこる物忘れ)

(10)失行、失認

これらの症状が現れたら、落ち着いて下記のことを行ってください。

(1)救急車を呼ぶ

意識がない時や大きないびきをかいている場合は重症と考え、救急車が来るまでの処置をききましょう。

(2)患者を救急隊員が処置しやすいところへ運びます

この時、絶対に患者を立たせないこと。

立たせると脳の血流が減少するので、寝かせたまま運びます。

(3)枕はせずに仰向けに患者を寝かせます

患者のネクタイやベルトをゆるめる。襟元をひろげておく。時計・眼鏡・入れ歯も外します。

(4)呼吸が苦しそうな時は、畳んだタオルを背中にいれ、アゴが上がるようにします

(5)吐きそうな時や吐いた時は、嘔吐で気道がふさがれないように、麻痺がある方を上にして横に寝かせます

今回紹介した方法は、脳梗塞が疑われる時以外にも対応できます。患者の寝かせ方などは、頭に入れておきましょう。


   


今回のまとめ

1)脳梗塞には3つのタイプがある

2)脳梗塞は動脈硬化や心臓病が原因でおこる

3)TIA症状に気がついたらすぐに治療をして大きな脳梗塞を防

4)脳梗塞を疑うような症状で倒れた人がいたら、絶対に立たせないこと