カルテを真剣に見つめる女性の医師

平成25年、脳血管疾患による死亡者数は年間11万人8000人に及び、その内脳出血の人数は3万3000人程度と統計が出ています。脳の病気については是非しっかりと知識を取り入れたいものです。今回は、脳内出血の症状、その6つの原因、前兆や治療法に至るまでお伝えします。


   


脳内出血の症状とは?代表的な6大症状と特徴の解説


1)脳内出血とは

脳内出血とは、脳内の血管が破れてしまうことにより引き起こされます。脳の大脳、小脳、脳幹で細かい動脈が案ら化の原因で破れて脳の中に出血を起こした状態です。このことにより、意識障害や運動麻痺、感覚障害などの症状が現れます。脳溢血(のういっけつ)とも呼ばれていました。

2)種類による違いは?脳内出血の5つの種類の違いとは

(1)被殻出血

脳出血の中でも最も多いタイプで、40〜50%を占めています。被殻(ひかく)というのは、脳の中央部に存在し、運動や感覚だけでなく言語理解や認識などの高次機能をも司っています。そのため、この部分に出血が起こると体の半身の麻痺・感覚障害や失語症などの症状が出る場合があります。

(2)視床出血

被殻出血の次に多く、脳出血の約3割を占めるのがこの視床出血です。視床とは、間脳の一部であり、運動や感覚を司る神経の束が多く存在している場所です。そのため、半身の麻痺だけでなく、感覚障害が強く現れ、出血後に視床痛という半身のひどい痛みを伴うことがあります。

(3)皮質下出血

脳の中の、大脳皮質という部分の下で出血が起こるタイプです。けいれんや軽い意識障害などの症状が現れます。
脳出血の中では症状が軽いほうで、予後も良好な場合が多いようです。

(4)小脳出血

小脳という、運動全体をコントロールしている部分に出血が起こり、運動障害などの症状が出ることが多いようです。

(5)脳幹出血

脳幹出血とは、橋(きょう)出血とも呼ばれますが、脳の最も奥の部分にある脳幹の中の橋というから出血することです。脳出血の中でも最も予後が悪く、また発症してから極めて短時間で昏睡状態に陥り、そのまま死亡するケースもあるため、早急な治療が必要となります。

group of doctors meeting at hospital office

3)何が原因?脳内出血の代表的な原因とは

(1)高血圧

高血圧が原因で起こる脳出血が最も多く、全体の70%を占めます。脳出血の患者さんの46%は高血圧の治療中に、24%は高血圧で治療をしていなかった人から起こっているとの報告結果もあります。また、高血圧だと言われていなくても、上の血圧が120mmHg以上あると、発症する率が高くなるという事も報告されています。高血圧の原因ともなる肥満、運動不足、乱れた食生活なども直接ではないものの、高血圧を誘発してしまうので注意が必要です。

(2)塩分の摂りすぎ

塩分(ナトリウム)をとりすぎると、血液中の塩分濃度が上がらないように、水分で薄める作用が働きます。そのため体内の水分が多くなり、血液の全体量が増大し血圧が上昇します。そのため血管に負担がかかり、脆くなった箇所から出血することがあります。

(3)過度の飲酒

お酒の飲み過ぎは、血圧を上昇させ脳出血のリスクが高くなります。また、多量のお酒で肝臓の機能障害がおこり、血液を固める力が弱くなって出血しやすくなると考えられています。実際、お酒の飲み過ぎで数値が悪くなるγGTPという検査の値が異常に高い人のグループでは、脳出血の発症が多くなったという結果が報告されています。

(4)脳動静脈奇形

生まれつきの血管の病気です。脳の血管の一部が毛細血管にうまく分かれることができなくなり、かわりに異常な血管で動脈と静脈が直接つながってしまうことで脳動静脈奇形になります。毛細血管がないので、本来は血管が細かく広がって分散される動脈血液が、高い圧力のまま直接静脈に流れ込みます。脳動静脈奇形の血管は正常血管に比べて壁が弱く破綻しやすいため、脳出血の原因となりやすいと考えられています。

(5)低コレステロール

成人の全身が含有するコレステロール量の内(100~150g)、その1/4は脳に集中しています。脳は他の組織や臓器よりグルコース(ブドウ糖)を多く必要としているように、コレステロールを必要とするために、脳内でも独自にコレステロール合成を行っているのです。また、人の細胞膜は、脂質による二重膜から構成されているのですが、その25%はコレステロールが占めています。コレステロールが不足すると、血管の内側を構成する内皮細胞が脆くなり、血管が裂けやすくなるのです。

(6)ヒートショック現象

冬のお風呂場で突然の脳出血が起こることによって、意識不明のままで緊急搬送されるというケースが増えています。温かいところから急に寒いところに移動する際に、血圧が急激に変化することが原因です。

4)症状をチェック!代表的な6つの前兆症状とは?

ほとんどが症状を感じることがないと言われていますが、脳出血へと至る前には身体にちょっとした不調があるという人も少なくないため、普段出来ていたことが急に出来なくなってしまった時には注意が必要です。また、意識がある場合、急に手足が動かなくなったことに戸惑い、焦り、亢奮して、血圧が上昇しがちです。ご自分で前兆を感じたら、焦らず、騒がず、落ち着いて救急車を要請しましょう。

(1)激しい頭痛

出血のため脳の中の圧力が高くなり、頭痛がしたりする事があります。頭痛と一緒に吐気がしたりする事もよくあります。脳出血の場合は、頭痛と何かしら麻痺やしびれなどの症状が一緒に出る事が多いです。

(2)手足のしびれ

脳出血が右側の脳に起こった時には左側の麻痺やしびれが起こり、左の脳に起こった時には右に症状が出ます。麻痺は歩けないほどの麻痺の時もありますが、顔だけに起こったり、手足のみに起こる場合もあります。

(3)ふらつき

足に力が入らず立てなかったり歩けなかったりする事があります。まためまいのため、フラフラしたりします。

(4)呂律が回らない

ろれつが回らなくなり何を言っているのかわからなくなる事があります。またそれだけではなく、頭で思った事が言葉にならない事や、人が言っている事が理解できなくなるなどの障害が起こります。

(5)充血・物が見えにくい

片方の目がかすんだり、暗くなったり、ぼやけて二重に見えたりします。

(6)前触れのない激しい肩こり

脳内で出血が起こると肩に送る情報が遮断されるため筋肉が硬くなり、激しい肩こりが起こります。

5)どんな治療方法がある?行われる可能性のある治療方法とは

(1)薬による治療

脳内出血を起こした直後は、高血圧になっている事が多く、脈拍も含めてとても不安定です。出血を増やさない事を考え、血圧や脈拍を安定化させる為に絶対安静が必要です。さらに特に高い血圧である場合は、血圧を下げる薬を用いて、積極的に安定化させます。その他には脳浮腫(出血部の周りの脳のむくみ)や胃潰瘍(脳卒中を起こした際に高率に併せて起こす事が知られています)に対する治療が行われていきます。

(2)手術による治療

脳内にある血腫の量を減らして、周囲の脳のダメージを減らす事が大きな目的となります。残念ながら、失っている(出血によって深く傷付いた)脳の機能を回復させる手術法は無く、全ての脳出血に手術が行われている訳ではありません。但し、症状の改善を考えて大きく頭蓋骨を開いて取り除く方法と、小さい穴を頭蓋骨に開けて針や内視鏡を入れて少しずつ吸い出す方法が手術として行われています。

脳出血後に形成される血腫の大きさにもより、被殻出血は血腫の大きさが直径4cm以上、小脳出血は血腫の最大径が3cm以上、皮質下出血は血腫が脳の表面から1cm未満に存在する場合に手術が行われます。視床出血や脳幹出血は原則的に手術は行われません。

Doctor showing xray to his patient

 

6)日常生活から改善を!脳内出血を予防する為の生活習慣とは

(1)高血圧を改善する

最大血圧135~140mmHg以上、最小血圧90mmHg以上で高血圧です。脳内出血の原因の7割が高血圧と言われています。

(2)肥満を解消する

太っている人ほど高血圧になりやすいと言われています。

(3)寒さ(寒暖の差)に注意する

暖かいところから急に寒いところへ行くと、血圧が急激にあがります。特に、高血圧の人ほど影響を受けやすいので注意が必要です。

(4)ストレスを解消する

ストレスは血圧にも影響を与えます。運動や旅行など、自分にあったストレス解消法を見つけましょう。

(5)規則正しい睡眠

睡眠が少ないほど高血圧になる割合が高いと報告されています。

(6)タバコを控える

タバコは急激に血管を収縮させてしまい、血液の流れが悪くなります。


   


今回のまとめ

1)脳内出血には脳内の出血はそのほとんどの原因が高血圧

2)脳内の出血の部位により、前兆の症状や治療法が異なる

3)体の左右どちらかだけに症状がでたら、脳内出血を疑う

4)リハビリテーションでは、段階を追った動作訓練を行う

5)予防にはまずは高血圧を予防することが最大のポイント

芸能人でも脳内出血で倒れた後、元気に復帰している方もいらしゃいます。症状が現れたら、一刻も早く処置することがその後の後遺症にも関わってきます。また、ご家族やご友人に前兆が見られた場合は、患者さんが慌てて興奮しないようにまずは周囲が落ち着いて、すぐに救急車を要請しましょう。