タブレットを指差して話し合うドクター

シャント手術という手術法。現在の医療現場では、手術を行う場合には患者や本人や家族に手術の方法や、効果、リスク等について説明をし、同意書を得ることになっています。

しかし医学的な知識がない患者や家族が、その場で理解をすることは難しいですよね。今回はシャント手術のステップ注意点をお伝えします。


   


シャント手術の8つの流れ!2つの合併症とは


1)シャント手術とは

(1)水頭症患者に行われる

シャント手術は「脳室腹腔髄液短絡術」(V-Pシャント)といいます。シャント手術とは、水頭症患者に行われる手術です。

脳室にチューブを入れ、皮膚の下を通したチューブから余分な髄液を腹の中に流し、腹膜で吸収させる手術方法です。

(2)大人と子供で異なる

腹膜は、腹膜透析にも使用されますが、水の吸収力があります。皮膚の下にチューブを通しても、外からチューブは見えません。

子供の水頭症の場合、人口チューブが感染したり詰まると水頭症が急激に悪化し、緊急再手術が必要になるため、脳室シャント手術ではなく、脳室鏡を用いた治療を行うことがあります。


2)水頭症の4つの原因

水頭症とは脳室の中でおこる脳脊髄液の通過障害や吸収障害により、脳脊髄液が脳室にたまり脳を圧迫するため、脳が正常に機能しなくなる病気です。原因は大人の場合と子供の場合で異なります。

(1)大人の場合

・脳腫瘍の場合

脳腫瘍が脳室にあると、髄液の流れが腫瘍に阻害され、急激に脳室が大きくなります。そのため頭痛や嘔吐などの頭蓋内圧亢進症になり、意識障害・昏睡状態という急性水頭症状態になります。

・くも膜下出血の場合

脳表の出血が原因で、くも膜からの髄液吸収量が低下して徐々に髄液がたまり、脳室が大きくなります。背中から髄液の圧力を測定しても、あまり圧力は高くありません。

この状態を正常圧水頭症といいます。症状は認知症、歩行障害、尿失禁などです。

・特発性の場合

特に疾患がなくても正常圧水頭症になることがあります。これを特発性正常圧水頭症といいます。原因は不明です。

症状はもの忘れ、足を左右に広げすり足や小刻みで歩く歩行障害、尿失禁などで、しばしば認知症と間違えられることがあります。

(2)子供の場合

新生児の頭蓋内出血や細菌性髄膜炎が原因で、髄液の吸収が低下して水頭症を発症します。


3)シャント手術の8つのステップ

シャント手術は1)で触れた脳室腹腔シャントが一般的ですが、脳室心房シャントや腰椎くも膜下腔腹腔シャント、脳室胸腔シャントがあります。ここでは脳室腹腔シャントを例にご紹介いたします。

(1)画像診断で水頭症だと診断されると「タップテスト」を行います。

細い針を脊髄腔に刺して髄液10ml~30mlをゆっくり抜きます(腰椎穿刺)。2時間安静にしてもらい、様子を見て立ち上がって歩いてもらいます。

足の運びがスムーズで歩行スピードが上がっていれば、手術で良くなる可能性があります。

(2)タップテストから2日後にシャント手術を行います。

手術は全身麻酔で行われます。

(3)頭蓋骨に人差し指ほどの小さな孔を開けます。

その孔に直径2㎜の脳室カテーテルを入れます。

(4)頭皮の下より頚部と側腹部を切開してシャントシステム(圧力を調整するバルブなど)を入れます。

(5)耳の後ろと頚部、胸部の皮下に腹腔カテーテルを通し、脳室カテーテルを接続します。

(6)脳室からの脳脊髄液の流れを確認した後、腹膜を切開して腹腔カテーテルの端を入れます。

(7)手術後CT画像等を参考にして皮膚の上からバルブの圧力を磁石で調整します。

(8)手術の翌日からリハビリを始め、1週間で歩行障害は改善されます。手術により歩行障害は9割、もの忘れやトイレの問題に関しても5割の人は改善されます。


4)シャント手術の合併症

シャント手術の後、合併症をおこして再手術を受ける確率は、1年で40%、2年で50%、

10年で30%といわれています。ここでは代表的な2つの合併症を取り上げます。

(1)シャント感染

起因菌は皮膚の常在菌である表皮ブドウ球菌が感染源の約60%を占めます。次に黄色ブドウ球菌が約30%、その他大腸菌などです。

症状は食欲不振と易性刺激(わずかな刺激で手足をふるわせる症状)、前触れ症状として軽度の発熱と血液検査でのCRP上昇があります。

感染が認められたら、直ちにシャントの除去、外ドレナージ、抗生物質の投与を行います。感染症の消退確認後、新しいシャントの設置、外ドレナージの撤去を行います。

(2)シャント閉塞

合併症の中で最も多い合併症です。シャント閉塞は術後1年以内に発症することが多く、年少の患者にみられます。原因はシャントバルブの機械的閉塞、脈絡叢や残骸による脳室カテーテルの閉塞、成長に伴う腹腔チューブの逸脱などがあります。

症状は年長児では頭蓋内亢進症状のめまいや頭痛などが現れ、乳児では易性刺激、食欲低下、頭囲拡大、睡眠障害があります。治療は原因となっているバルブやカテーテルの入れ替え手術を行います。


   


今回のまとめ

1)シャント手術は水頭症の治療法の1つ

2)水頭症の原因は脳の病気が引き金になることが多い

3)シャント手術はタップテスト後2日後に行い翌日からリハビリが始まる

4)シャント手術の合併症はシャント感染とシャント閉塞