パソコンを見ながら会話をする医師

髄膜炎という病名をご存知でしょうか。お子さんをお持ちの方は、予防接種の時に名前を耳にしたことがある方もいるかも知れません。

この病気は未就学児がかかると非常に重大な障害を残す場合もあり、大人の場合と症状が異なるため、大人と未就学児との場合に分けてご紹介いたします。

なお、本文中では医学的な観点により未就学児を小児と表記させていただきます。


   


9つの髄膜炎の種類と後遺症が残る4つのケース


1)髄膜炎とは

髄膜炎は大きくわけて2つあります。細菌が感染することが原因の細菌性髄膜炎と、細菌以外が原因で発症する髄膜炎です。

細菌性髄膜炎はインフルエンザ菌や、肺炎球菌などの細菌が血液から中枢神経へ到達。

または、副鼻腔炎や中耳炎から直接、髄膜(脳や脊髄を包む膜)へ到達することで発症します。

細菌以外が原因の髄膜炎は、大きくわけて9つあります。

(1)細菌以外の感染性髄膜炎

結核性髄膜炎や梅毒性髄膜炎など

(2)急性脳炎、脳症

単純ヘルペス脳炎など

(3)髄膜内局所感染症

硬膜下脳症や脳膿症

(4)頸椎疾患

頸椎骨隨炎など

(5)自己免疫疾患

神経ベーチェット、血管炎など

(6)腫瘍性疾患

がん性髄膜炎、白血病の中枢神経浸潤など

(7)薬剤性髄膜炎

免疫グロブリン製剤、非ステロイド性消炎鎮痛剤

(8)中枢神経疾患

脱髄性疾患、血管性疾患(くも膜下出血や脳梗塞など)、てんかん

(9)熱性疾患 

今回はこの中でも発症率が一番高い、細菌性髄膜炎について取り上げていきます。


2)細菌性髄膜炎の症状

 (1)大人の場合

気を付けていただきたい症状は4つあります。

Ⅰ)頭痛

Ⅱ)項部硬直(首が固くなり、横になった首を起こそうとすると痛くい状態)

Ⅲ)発熱

Ⅳ)意識障害

発症経過は2つあります。数時間のうちに急激に悪化する場合と数日かけて症状が悪化する場合があります。なかでも頭痛は早期に出現し、頻度も高いといわれています。

頭痛は重要な症状で、診断時にも1秒間に2~3回の速さで頭部を水平方向に回旋させ、痛みが増すか調べることで、髄膜炎か調べることがあります。

(2)小児の場合

大人よりも症状が多様です。一般的には年齢が低下するにしたがって、症状が軽微になるといわれています。

乳児の場合、低体温や下痢に加え黄疸、大泉門隆起(頭の大泉門が腫れること)があります。

幼児の場合、発熱、食欲低下、嘔吐、頭痛、項部硬直や意識障害などがあります。小児の場合、発症経過は3つあります。

数時間のうちに急激に悪化する場合、数日かけて症状が悪化する場合、1日かけて髄膜炎特有の症状を出現する場合があります。

いづれにしても、様子がおかしいと思ったら、早めに病院を受診してください。

小児の場合、年齢によって症状が異なります。また、本人が症状を正確に伝えられませんので、母親の観察が重要になります。

また、大人の場合頭痛を診断時に重要視する場合がありますが、頭の痛み方で自己診断ができるような痛みの特徴は頭痛にはありません。

大人でも小児でも頭痛や発熱があったら、速やかに病院を受診してください。

カルテに記入をする医師


3)細菌性髄膜炎の原因とは

(1)大人の場合

原因の60~70%は肺炎球菌、10%はインフルエンザ菌、その他腸内細菌などがあります。

(2)小児の場合

生後1ヶ月未満の場合、50%は大腸菌が原因菌、残りの40~50%はGBS(B群レンサ球菌)が原因で、これらは母親の腸管や膣から感染したものです。

生後1ヶ月以降はインフルエンザ菌や肺炎球菌が増えてきますが、これらはワクチンの予防接種が普及して近年減少傾向にあります。

その他、髄膜炎菌やGBSが原因の場合もありますが、ごくまれです。

上記の他に年齢問わず、頭蓋骨を切開するような手術や頭蓋骨の外傷が原因で、ブドウ球菌を原因とする細菌性髄膜炎になることがあります。


4)細菌性髄膜炎の後遺症が残る4つ&6つの条件

(1)大人の場合

細菌性髄膜炎の致死率は20%前後。生存者の30%に後遺症があり、感音性難聴などの脳神経障害、認知機能障害、片麻痺などがあります。

後遺症が残るかは下記の4項目に該当する場合が多いといわれています。

Ⅰ)高齢である

Ⅱ)入院時に意識障害がある

Ⅲ)髄液の細胞数が減少している

Ⅳ)原因菌が肺炎球菌である

(2)小児の場合

細菌性髄膜炎の致死率は5%以下、生存者の18.8%に後遺症があり、硬膜下水腫、脳腫瘍、水頭症、痙攣、難聴、知的障害などがあります。

後遺症が残るかは下記の6項目に該当する場合が多いといわれています。

Ⅰ)2歳未満である

Ⅱ)入院時に意識障害がある

Ⅲ)原因菌が肺炎球菌である

Ⅳ)7日以上の発熱がある

Ⅴ)重症呼吸障害がある

Ⅵ)紫斑がある

以上のことから、重篤化し後遺症が残る原因は原因菌が肺炎球菌であり、病院での治療の開始が遅くなることであることがわかりました。

小児の致死率や後遺症の発症率が低いのは、大人に比べ小児の発症率が低いためです。

これは、日本での予防接種の受診率が高いため発症率が低いうえに、細菌性髄膜炎を発症しても重症化しにくいことにあります。


   


今回のまとめ

1)髄膜炎は細菌性髄膜炎とその他の髄膜炎にわけられる

2)細菌性髄膜炎の症状は大人の場合と乳児、幼児の場合で異なる

3)細菌性髄膜炎の原因で多いのは肺炎球菌

4)細菌性髄膜炎の後遺症が残る確率は低い。原因が肺炎球菌だと重篤になるので注意